十二指腸液細胞診について【多摩細胞診研究会で発表させて頂きました】|立川髙島屋S.C.大腸胃食道の内視鏡・消化器内科クリニック

WEB予約

LINE予約

人間ドック
予約専用
フォーム

電話予約

     
下層ヘッダー

十二指腸液細胞診について【多摩細胞診研究会で発表させて頂きました】

十二指腸液細胞診について【多摩細胞診研究会で発表させて頂きました】|立川髙島屋S.C.大腸胃食道の内視鏡・消化器内科クリニック

2026年4月26日

先日、多摩細胞診研究会という30年も続く東京西部の有名病院の細胞検査士様、病理医の先生が集う会で発表の機会を頂きました。内容は2020年〜2024年まで私が打ち込んでいた膵癌早期診断における、膵液細胞診・十二指腸液細胞診について、御紹介するものです。

第58回 多摩細胞診研究会 プログラム(2026年4月25日 立川相互病院 薬局棟2F講堂)
教育講演1 ─ 演題タイトル:膵液、十二指腸液を用いた早期膵癌発見の取り組み

発表の要旨

十二指腸液細胞診は膵癌や胆道癌の病理診断として、1950〜1970年頃に盛んに研究されていたのですが、1970年頃からは内視鏡検査で膵管・胆管の膵液・胆汁を直接採取できるようになったため急速に廃れたものです。

その後も再興することなく経過しましたが、十二指腸液のS100蛋白を測定することで、侵襲少なく外来で膵癌早期診断ができるかもしれないという形で、HOTなテーマはまだ続いております(九州大学など)。

ですが現在まだそのような検査は普通の病院では行えないのが現状です。また、そもそも膵癌早期診断自体がここ10年ほどまではあまり現実的でなかったので、そのための検査の発達も遅かった?ようにも感じています。

今後膵癌早期診断が現実的になってきたとき、その一助として十二指腸液細胞診は有用性があるのでは、と信じています。

お声がけ頂いた皆様へ

病理部が大変強く、膵癌早期診断の際は強い御助力を頂いた、立川相互病院の先生方、細胞検査士様からお声がけを頂きました。大きな病院のたくさんの熱心な先生方、細胞検査士様が参加されておられ、こちらも日々のモチベーションが高まりました。誠にありがとうございました。

お伝えしたこと

膵癌は予後不良です。膵癌は日本でも世界でも増えており、今後の世界的な課題です。その課題の解決法はまだまだ確立されておりません。

ただ10年ほど前より、膵癌早期診断研究会の先生たちのお力で、少しずつ膵癌の早期診断・早期治療による予後改善の道筋が見えてきています。一方そのためには入院とリスクを伴う検査が必須で、その検査を行うかどうか悩ましいことが多いです。

そのためできるだけ低侵襲で入院せずに行える検査方法が色々試行錯誤されているところです。N-NOSEや新しい腫瘍マーカーや十二指腸液のS100蛋白などです。

十二指腸液細胞診は古くからあった検査で、膵癌早期診断が現実的になってきた今こそ、改めてその価値が見直されてもよいかもしれない検査法ではないか ── そのような内容です。

十二指腸液検査の歴史

以下、十二指腸液検査の歴史というものを今回の発表にあたり新たに調べました。その部分だけ興味深かったので共有します。

1917年|十二指腸液検査の始まり

口から十二指腸まで管を入れて十二指腸の液体を採取し続ける検査法が、海外で初めて報告されました(Meltzer, Lyon)。

1917年 Meltzer, Lyonによる十二指腸液検査の報告(十二指腸ゾンデによる)

1937年|日本での臨床応用

日本でも口から十二指腸に管を通す方法での十二指腸液検査が初めて報告されました(井上ら『十二指腸ゾンデの臨床的応用』南江堂)。当時は細胞診ではなく胆道感染症の細菌培養検査としての用途でした。

1937年 日本での臨床応用報告(井上ら)─ なぜ既に保険が通っているのか

1949年|細胞診で膵癌診断

十二指腸液細胞診で膵癌を診断できたという報告が海外でありました(McNeer, Ewing)。Exfoliated pancreatic cancer cells in duodenal drainage; a case report.

1949年 McNeer & Ewing ─ 十二指腸液細胞診で膵癌を診断した報告

1960年|Papanicolaou共著の総説

その後も日本・海外で十二指腸液細胞診で膵癌や胆道癌の病理診断ができるという報告が相次ぎます。1960年にはPapanicolaou共著の総説も。Papanicolaouは病理学における歴史的な有名人です。

1960年 Bowden & Papanicolaou ─ The diagnosis of pancreatic cancer by cytologic study of duodenal secretions

1961年|癌研からの報告

癌研の先生たちも十二指腸液細胞診で膵頭部癌が診断できましたと報告(藤井ら『癌の臨牀』7(6) 392-394)。

1961年 藤井ら(癌研)─ 十二指腸液細胞診で診断出來た膵頭部癌の1例

1966年|膵癌・胆道癌・十二指腸癌への応用

膵癌だけでなく胆道癌、十二指腸癌も十二指腸液細胞診で診断できましたという報告(宮崎ら、金大)。日本臨床細胞学会雑誌 5(2) 134。

1966年 宮崎ら(金大)─ 十二指腸液細胞診に関する一考察

同年、膵癌・胆道癌・十二指腸癌154例、非癌220例の検討で、十二指腸液細胞診の特異度の高さ、膵尾部癌より膵頭部癌のほうがより有用である可能性などが報告されています。

1966年 山形ら(東北大)─ 十二指腸液の細胞診 特に膵癌の細胞診
非癌220例ではわずか2例のみ偽陽性。主乳頭に近い膵癌のほうが十二指腸液細胞診で陽性率が高い可能性が示唆された

この「膵頭部癌のほうがより有用であろう」という気付きは、このときから50年を経て立川相互病院で149例の十二指腸液細胞診を診ておられた細胞検査士様もお気づきになられていた点で、恐らく真実なのだろうと思います。

1975年〜|衰退期

1975年頃から、十二指腸液細胞診の報告数はがくっと減って、急速に衰退してきます。恐らく、口からの内視鏡で胆管・膵管への直接アプローチができるようになり、それらがぐちゃぐちゃに混ざった十二指腸液の細胞診をする必要性がなくなったのだと思います。

現代|再評価への萌芽

ですが、十二指腸液という検査は他の検査に比べてかなり低侵襲(体に害少なく)に実施可能なので、基礎研究的に続いていきます。その有用性は今でも本当に稀ですが報告があり、直近の検索では海外でPandhicathと言う十二指腸液を回収する専門の医療機器なども開発されているようです。

2025年 Kashintsev & Proutski ─ Duodenal aspiration biopsy for diagnosing pancreatic cystic lesions(Pandhicathによる症例報告)

今後について

十二指腸液検査の歴史と今後 ─ Stage0膵癌の診断・治療の戦略が確立されつつある今

十二指腸液細胞診という検査が今後普及するか、それとも他の低侵襲な検査が普及して細胞診は普及しないか、わかりません。ですが当院ではその有用性を感じているため続けていく予定です。

立川髙島屋S.C.大腸胃食道の内視鏡・消化器内科クリニックで採取した十二指腸液検体を立川相互病院 病理部で検査する連携体制を作っていただきました。

記事監修者

院長 谷口 孝伸

院長 谷口 孝伸

日本内科学会 認定内科医 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医

弘前大学を卒業。立川の地で12年間、消化器内科医として研鑽を積み、甲府共立病院・がん研有明病院にて大腸カメラ、超音波内視鏡等の専門的な検査技術を習得。2024年8月、立川髙島屋S.C.大腸胃食道の内視鏡・消化器内科クリニック開設。

詳しい経歴や実績については、こちらをご覧ください。

TOP