虚血性腸炎のときの食事は?避けるべき食材など医師が解説|立川髙島屋S.C.大腸胃食道の内視鏡・消化器内科クリニック

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虚血性腸炎のときの食事は?避けるべき食材など医師が解説

虚血性腸炎のときの食事は?避けるべき食材など医師が解説|立川髙島屋S.C.大腸胃食道の内視鏡・消化器内科クリニック

2025年6月19日

突然の腹痛からの血便で驚いたことはありませんか?虚血性腸炎は、腸の血流が一時的に悪くなることで発症する病気で、中高年女性に多くみられます。特に食事との関係が深く、発症後の誤った食習慣が症状を悪化させたり、回復を遅らせたりすることもあります。

本記事では、虚血性腸炎の症状や原因に加えて、急性期・回復期に応じた食事の取り方、再発を防ぐ食生活まで、医師の視点からわかりやすく解説します。

虚血性腸炎とは?

虚血性腸炎とは、大腸への血流が一時的に不足することで、腸の粘膜に炎症や潰瘍が起こる病気です。血流が悪くなる原因は、動脈硬化や脱水、便秘、血圧の急な低下などさまざまですが、恐らく足が攣るように腸が一時的にぎゅっと攣るような原因があるのではと思います。
比較的高齢の方や、基礎疾患(高血圧・糖尿病・心疾患など)を持つ方に多く発症しますが、中年女性で特に原因もなく発症する方も多いです。

主な症状は、左下腹部のズキズキとした痛みからの下痢→血便です。症状は突然始まり、その特徴的な経過(腹痛→下痢→血便)からほとんどお話しを聞いただけで診断できます。

大腸内視鏡検査や腹部超音波検査、CT検査を行うとほぼ確定診断ができます。
治療の方向性決定のためにも、早期発見・早期治療が重要であり、発症したときは極力食事を避け、安静を保つことが求められます。
軽症の虚血性腸炎でしたら、自宅で食事に注意することで数日で治せますが、重症な虚血性腸炎のときは、腸が壊死して自宅では治せない~命に関わることもありますので、あまりの激痛が続く~ひどい血便が続くときは自宅でがんばらず救急外来を受診しましょう。

【急性期】虚血性腸炎の症状が強いときの食事

虚血性腸炎の急性期は、腹痛・血便・下痢などの症状が強く現れる数日間です。この期間は、腸が炎症を起こしているため、なるべく腸に負担をかけない(腸管安静と言います)のが一番の治療になります。

急性期の基本的かつ唯一の治療方針は「絶食(食事を一切控える)」です。特に、症状が強く現れている初日〜3日間は、水分補給に専念し、腸の安静を優先させます。

脱水予防と少し栄養も取る目的で、以下のような水分が適しています。

・経口補水液(OS-1など)
・常温の白湯
・薄めたスポーツドリンク(糖分が多すぎないもの)
・(もし軽症なら)柔らかいおかゆなど

【回復期】少しずつ食事を再開するタイミングと内容

虚血性腸炎の急性期(数日間)が過ぎて症状(腹痛と血便)が落ち着いてきたら、回復期に入ります

この時期は、腸のダメージから徐々に回復していくタイミングですが、無理に通常の食事に戻すと再発や悪化の原因となるため、段階的に食事内容を進めることが重要です。

【食事再開のステップ】

1.重湯・おもゆ(米のとぎ汁状の流動食):1-2日間
2.三分〜五分がゆ(柔らかいおかゆ):1-2日間
3.全がゆ・柔らかく煮た野菜・豆腐など:1-2日間
4.低脂肪・低刺激の通常食:1-2日間

腹痛・血便が再び悪化しないことを確認しながら、ゆっくりステップアップするのが安全です。少量ずつ、よく噛んでゆっくり食べることがポイントです。

避けるべきものは、消化の悪い食品(繊維質が多い野菜、生もの、揚げ物など)や、香辛料・アルコールです。回復期はまだ完全に安心はできないため、注意深い食事管理が求められます。

虚血性腸炎のときに「食べて良いもの」一覧

虚血性腸炎の回復期から再発予防期にかけては、腸に優しい食材を選ぶことが大切です。以下は、比較的安全に摂取できる「食べてよいもの」の一例です。
あくまで目安であり、体調や医師の指示に応じて調整が必要です。

食品カテゴリ内容例
主食・重湯
・全がゆ
・柔らかいご飯
・うどん(よく煮たもの)
タンパク質 ・豆腐
・白身魚(蒸す・煮る)
・卵(半熟ではなくしっかり加熱)
野菜・よく煮たにんじん
・よく煮たかぼちゃ
・よく煮た大根(繊維を除去)
果物・バナナ
・りんごのすりおろし(加熱するとより安心)
飲み物・白湯
・薄いお茶
・経口補水液  

虚血性腸炎の回復期に「避けるべき食べ物」一覧

虚血性腸炎の急性期から回復期、そして再発予防の観点でも「避けるべき食べ物」を理解することは極めて重要です。腸への刺激が強いものや消化に負担がかかるものは、症状悪化の原因となります。

カテゴリ内容例
脂っこい食事      ・揚げ物
・脂身の多い肉
・バターやラードを多用した料理
繊維の多い食品  ・ごぼう
・れんこん
・きのこ
・海藻類
・生野菜
刺激物  ・キムチ
・唐辛子
・カレー
・ニンニク
・わさび
アルコール・カフェイン  ・ビール
・日本酒
・コーヒー
・濃い緑茶
乳製品(人により注意)  ・牛乳
・ヨーグルト
・チーズ

食事以外に気をつけたい生活習慣・食事の工夫

虚血性腸炎の発症や再発を防ぐには、食事の内容だけでなく、日常生活や食べ方そのものにも注意が必要です。以下の生活習慣や工夫を意識することで、腸への負担を軽減できます。

生活習慣のポイント

・便秘を予防する
 適度な水分補給と運動で腸の動きを促す

・ストレスを溜めない
 自律神経の乱れが腸の血流に影響する

・睡眠をしっかり取る
 回復力を高めるための基本

食事の工夫

・ゆっくりよく噛んで食べる
・腹八分目を心がける
・1日3食を規則正しく摂る
・食後すぐに横にならない

これらの習慣は、腸内環境の安定にもつながります。とくに高齢者や持病をお持ちの方は、日々の生活を整えることが大きな予防策になります。

虚血性腸炎の再発を防ぐためのポイント

虚血性腸炎は一度治っても再発することが5%ほどあります(そんなに高確率ではありません)。また、虚血性腸炎の原因は色々な仮説がありますため、ただひとつの予防策で完全に防げるものではありません。再発を防ぐためには、継続的な食生活の見直しと腸への配慮が欠かせません。日々の小さな積み重ねが、予防につながります。

虚血性腸炎の原因と再発予防策

・脱水
 水分をこまめにとる

・腸に鞭を打つタイプの刺激性下剤(センノシドやピコスルファートなど)
 できるだけ使用しない

・便秘
 整腸剤、酸化マグネシウム、モビコールなど非刺激性の下剤をメインに使う

・女性ホルモンやピル
 できることなら使用しない

・ロキソニン等の痛み止め
 できることなら使用しない

・動脈硬化
 健康的な食事運動習慣をつける、高血圧糖尿病脂質異常症があれば治療する

・膠原病や血管炎
 怪しき症状があれば病院で精密検査を受ける

・ストレス
 できるだけためない、ストレスでつらいときはよくやすむ

・エルゴタミン(片頭痛治療薬)
 できることなら使用しない

・電解質異常
 水分や食事をバランス良く摂取する

まとめ

虚血性腸炎は、腸の血流が一時的に低下することで起こる疾患で、適切な食事と生活管理が治療と再発予防において重要です。急性期には腸を休ませるための絶食や水分補給が中心となり、回復期にはおかゆや柔らかい食事から段階的に再開することが基本です。

「食べてよいもの」と「避けるべき食べ物」を正しく理解し、腸への刺激を最小限に抑えることが大切です。また、日々の食生活や生活習慣の見直しも、再発を防ぐうえで欠かせません。 症状が出た場合は自己判断せず、早めに消化器内科を受診しましょう。当院では虚血性腸炎の診断・治療に対応しておりますので、気になる症状があればお気軽にご予約ください。

記事監修者

院長 谷口 孝伸

院長 谷口 孝伸

日本内科学会 認定内科医 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医

弘前大学を卒業。立川の地で12年間、消化器内科医として研鑽を積み、甲府共立病院・がん研有明病院にて大腸カメラ、超音波内視鏡等の専門的な検査技術を習得。2024年8月、立川髙島屋S.C.大腸胃食道の内視鏡・消化器内科クリニック開設。

詳しい経歴や実績については、こちらをご覧ください。

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