冬に気をつけたい牡蠣による食中毒【専門医監修】|立川髙島屋S.C.大腸胃食道の内視鏡・消化器内科クリニック

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冬に気をつけたい牡蠣による食中毒【専門医監修】

冬に気をつけたい牡蠣による食中毒【専門医監修】|立川髙島屋S.C.大腸胃食道の内視鏡・消化器内科クリニック

2025年10月16日

牡蠣による食中毒

冬の味覚として楽しみにしている方も多い牡蠣ですが、毎年この時期になると食中毒の報告が増加します。
当院でも、牡蠣を食べた後に激しい嘔吐や下痢などの症状で来院される患者様がいらっしゃいます。
牡蠣による食中毒は、正しい知識があれば予防することも可能です。
この記事では、牡蠣による食中毒の原因から症状、予防法、対処法まで詳しく解説いたします。
美味しい牡蠣を安全に楽しんでいただくために、ぜひご一読ください。

冬に牡蠣の食中毒が増える理由

冬場になると牡蠣による食中毒が増えます。
これは牡蠣の旬と食中毒の原因となるウイルスの特性が関係しているためです。

牡蠣は冬に産卵期を控えて栄養を蓄え、水温低下で身が引き締まり、グリコーゲンなどの栄養成分が豊富になります。この時期の牡蠣は濃厚で甘みが強く、最も美味しいとされています。
一方で、主な原因であるノロウイルスは低温・乾燥した環境で活性が高まります。

このように、牡蠣が最も美味しい季節と食中毒リスクが高まる時期が重なることから、冬場は特に注意が必要となります。

牡蠣による食中毒の主な原因は?

牡蠣による食中毒の原因は、ほとんどがノロウイルスです。
当院にも牡蠣を食べた後に激しい嘔吐や下痢で来院される患者様が多くいらっしゃいます。

ノロウイルスの特徴

・少ない量で感染します
 ほんの数個のウイルスが口に入っただけでも感染してしまいます。
・アルコール消毒が効きにくい
 手指消毒用のアルコールではウイルスを完全に除去できません。
 石けんでしっかり手を洗うことが大切です。
・治った後もウイルスが出続けます
 症状がなくなっても、しばらくは便の中にウイルスが含まれていることがあります。

お子さんや高齢の方、妊娠中の方は特に重症化しやすいため、生牡蠣は控えていただくことをお勧めします。

牡蠣の食中毒の症状と潜伏期間

潜伏期間

牡蠣を食べてから症状が出るまでの時間は、牡蠣を食べた翌日から2日目くらいに症状が現れることが多くあります。

主な症状

・突然の激しい嘔吐
 胃がムカムカした後、急に激しい嘔吐が始まります。
 特に発症初期に目立つ症状です。
・下痢
 水のような下痢が1日に何度も繰り返されます。
 血便が出ることは少ないです。
・腹痛
 お腹全体が痛くなったり、キリキリとした痛みを感じたりします。
・微熱
 37度台の微熱が出ることがありますが、高熱になることは少ないです。
・吐き気
 食欲がなくなり、気持ち悪さが続きます。

症状の経過

症状が最も激しいのは発症から1日程度です。
その後、徐々に症状は落ち着いていき、通常3日程度で回復します。
ただし、お子さんや高齢の方は脱水症状を起こしやすいため、注意が必要です。

牡蠣の安全な加熱方法と調理のコツ

牡蠣を安全に食べるには、正しい加熱方法を知ることが大切です。
ノロウイルスは熱に弱いため、適切に加熱すれば食中毒を防ぐことができます。

牡蠣の安全な加熱温度と時間

ノロウイルスを完全に死滅させるには、牡蠣の中心部を85度以上で1分間以上加熱する必要があります。
表面だけでなく、中心部までしっかり熱を通すことが重要です。

調理方法別のポイント

・焼き牡蠣
 殻付きのまま焼く場合は、殻が開いてからさらに5分以上加熱しましょう。
 中がぐつぐつと煮立つくらいまで火を通します。
・牡蠣フライ
 衣が色づいても中まで火が通っていないことがあります。
 大きめの牡蠣は180度の油で4分以上揚げましょう。
・牡蠣鍋
 鍋に入れてから5分以上しっかり煮込みます。
 牡蠣が縮んでプリッとした状態になるまで加熱してください。
・蒸し牡蠣
 蒸気が上がってから8分以上蒸しましょう。

調理時の注意点

・生牡蠣を触った手や調理器具は、他の食材に触れる前に必ず石けんで洗いましょう
・まな板は生牡蠣専用のものを使うか、使用後すぐに熱湯消毒してください
・加熱が不十分な「半生」の状態が最も危険です。見た目だけでなく時間も確認しましょう

牡蠣で食中毒を起こさないための予防法

牡蠣による食中毒は、日常生活での予防対策で大幅にリスクを減らすことができます。

購入時の注意点

生食用と加熱用の違いを理解する

生食用は衛生管理された海域で育てられていますが、それでもリスクはゼロではありません。
加熱用は必ず火を通して食べましょう。

新鮮なものを選ぶ

購入時は殻が閉じている牡蠣を選び、購入後はすぐに冷蔵庫に入れてください。

消費期限を守る

牡蠣は傷みやすい食材です。期限内に食べきるようにしましょう。

もし牡蠣を食べて食中毒の症状が出たら?

すぐにできる対処法

・安静にする
 無理に動かず、横になって休みましょう。
 嘔吐しやすいように顔を横向きにしておくと安心です。
・水分補給を心がける
 嘔吐や下痢で体の水分が失われます。
 常温の水や経口補水液を少しずつ飲みましょう。
 一度にたくさん飲むと吐いてしまうので、少しずつ飲みましょう。
・下痢止めは使わない
 下痢はウイルスを体外に出す大切な働きです。
 自己判断で下痢止めを飲むと、かえって症状が長引くことがあります

こんな時はすぐに医療機関を受診してください

・何度も嘔吐が続いて水分が取れない
・ぐったりして立ち上がれない
・尿が半日以上出ていない
・唇や舌が乾燥している
・意識がもうろうとしている
・高齢の方やお子さん、妊娠中の方が発症した

家族への感染を防ぐために

・トイレの後は必ず石けんで手を洗いましょう
・嘔吐物や便の処理は使い捨て手袋を使用し、次亜塩素酸ナトリウムで消毒してください
・症状が治まった後も2週間程度はウイルスを排出しているため、手洗いを徹底しましょう

まとめ

冬の味覚である牡蠣は、正しい知識を持って楽しめば、安全に美味しく食べることができます。
牡蠣による食中毒の多くはノロウイルスが原因で、冬場に感染リスクが高まります。
予防の基本は、中心部まで85度以上で1分間以上の十分な加熱と、調理前後の手洗いの徹底です。
特にお子さんや高齢の方、妊娠中の方は生牡蠣を避け、必ず加熱したものを召し上がってください。
万が一、牡蠣を食べた後に嘔吐や下痢などの症状が出た場合は、安静にして水分補給を心がけ、症状が重い場合や改善しない場合は早めに医療機関を受診しましょう。

当院では、消化器内科の専門医として、食中毒の診療を行っております。
気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 生食用の牡蠣なら生で食べても安全ですか?
A. 生食用は加熱用より安全性が高いですが、リスクはゼロではありません。生食用は衛生管理された海域で育てられ、出荷前に検査もされていますが、ノロウイルスを完全に除去することは難しいのが現状です。体調が良い時に少量楽しむ程度にして、お子さんや高齢の方、妊娠中の方は避けることをお勧めします。

Q. 牡蠣を食べてどれくらいで症状が出ますか?
A. 通常、牡蠣を食べた翌日から2日目に症状が現れます。この潜伏期間があるため、原因が牡蠣だと気づきにくいこともあります。

Q. 牡蠣による食中毒は人にうつりますか?
A. はい、うつります。ノロウイルスは感染力が非常に強く、患者様の便や嘔吐物から家族に感染することがあります。トイレの後の手洗いを徹底し、タオルの共用も避けてください。症状が治まった後も2週間程度は注意が必要です。

Q. 一度ノロウイルスにかかったら免疫ができますか?
A.ノロウイルスには多くの型があり、一度感染しても別の型に感染することがあります。また、同じ型でも免疫は長続きしないため、何度でも感染する可能性があります。

Q. 酢やレモンをかければ生牡蠣も安全ですか?
A. いいえ、酢やレモンではノロウイルスを死滅させることはできません。安全に食べるには、85度以上で1分間以上の加熱が必要です。

記事監修者

院長 谷口 孝伸

院長 谷口 孝伸

日本内科学会 認定内科医 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医

弘前大学を卒業。立川の地で12年間、消化器内科医として研鑽を積み、甲府共立病院・がん研有明病院にて大腸カメラ、超音波内視鏡等の専門的な検査技術を習得。2024年8月、立川髙島屋S.C.大腸胃食道の内視鏡・消化器内科クリニック開設。

詳しい経歴や実績については、こちらをご覧ください。

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