2026年10月13日

健康診断で肝機能異常、AST・ALT・γ-GTPが高いと指摘された方へ。数値の意味、飲酒以外も含めた原因、脂肪肝と血管の病気との関係、受診後の流れ、腹部エコーで分かることを、消化器内科専門医の視点で解説します。
AST・ALT・γ-GTPとは?数値の意味について
健康診断の肝機能検査でよく登場するのが、AST・ALT・γ-GTPの3つです。
いずれも肝臓に関連する項目です。多くは肝臓に負担がかかって細胞が傷つくと、これらの数値が高くなります。
3つの数値の特徴を、表にまとめました。
| 検査項目 | どんな酵素か | 基準値の目安 |
| AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ) | 肝臓のほか、心臓や筋肉にも含まれます | 30U/L以下 |
| ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ) | 主に肝臓に含まれ、肝臓の状態を反映しやすい項目です | 30U/L以下 |
| γ-GTP(ガンマ・グルタミルトランスペプチダーゼ) | 胆道(胆汁の通り道)に多く、お酒の影響を受けやすい項目です | 50U/L以下 |
ここで知っておいていただきたいのが、次の2点です。
- ・数値が基準を超えただけで、すぐに重い病気とは限りません。
- ・高い状態が続く場合は、一度きちんと原因を調べておくと安心です。
そしてまず大切なのが、AST・ALT・γ-GTPのどれが高いのかによって、考えられる原因が変わってくるという点です。たとえばALTが高いときは脂肪肝、γ-GTPが高いときはお酒や胆道の原因、といった具合です。
肝機能異常の主な原因
肝機能の数値が上がる原因は、ひとつではありません。ただ、その頻度には大きな差があります。外来で最も多いのは、脂肪肝による肝炎です。
主な原因(外来で多い順)
- 脂肪肝による肝炎(最も多い)
食べすぎや運動不足で、体重が増加して肝臓に脂肪がたまり肝炎になっている状態です。近年はMASH(代謝異常に関連した脂肪肝炎)とも呼ばれます。 - お酒による肝炎
毎日の飲酒が続くと、肝臓に負担がかかって起こります。γ-GTPやASTも高くなることが多いです。 - お薬・健康食品による肝炎
服用中のお薬やサプリメントが影響することがあります。どんな健康食品でも添加物等で肝炎を生じ得るので、疑う必要があります。 - 感染やワクチンのあとの一時的な肝炎
コロナ感染やワクチン接種後などに、一時的に上がることもあります。
次に、数値の傾向についてご説明します。どの数値が高くなりやすいかは、原因によってある程度の傾向があります。ただし、これはあくまで目安です。実際の診断には、具体的な問診と追加の検査が必要になります。
| 高くなりやすい数値 | 関連しやすい原因 |
| ALTが高い | 脂肪肝による肝炎、お薬による肝炎 |
| AST・γ-GTPが高い | お酒による肝炎、胆道の病気 |
なお、お酒が原因の場合は、γ-GTPが高くなることが多いです。一方、脂肪肝による肝炎ではγ-GTPが上がらないこともあがることもあります。
ただ、数値のパターンだけで原因を決めることはできません。またお酒と脂肪肝など、いくつかの原因が重なることもあり、検査値の例外も少なくありません。
肝機能異常が要精査と言われる理由
脂肪肝やアルコール性肝炎となると、結局は食事運動によるダイエットや節酒・断酒による治療をしましょうね、というだけですばらしい特効薬があるわけではありません。
それなのに肝機能異常となるとほぼ、「要精密検査」という強い推奨がされるのには理由があります。それは、「きっと脂肪肝やアルコールだろうと思ったら、実は大変危ない病気だった!」という想定外のことがあり得るからです。
具体的には、B型肝炎、C型肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、甲状腺の病気、肝臓がん、胆道がんなどです。
万が一治療が必要なそれらの肝炎を否定するために、精密検査を受けてくださいね、という理屈です。
肝機能異常で消化器内科を受診後の流れ
健診で肝機能異常を指摘された方の中には、ごくまれにB型・C型肝炎や肝臓がんなどが隠れていることがあります。それらを見逃さないために「念のため詳しく調べましょう」というのが、精密検査の目的になります。
受診は2回に分かれます(逆に言うと2回で終わりということが多いです)
- 1回目:くわしい血液検査
ウイルス性肝炎や自己免疫性肝炎など、治療が必要な原因が隠れていないかを血液検査で確認します。 - 2回目:血液検査の結果説明+腹部エコー検査
前回の血液検査で悪い病気がなかったかの結果説明をして、血液検査でわからない肝臓がんや胆道がんなどがないかの腹部エコー検査をします。
多くは採血でもエコーでも悪い病気はみつかる、結局そしたら内臓脂肪による脂肪肝やお酒による肝炎でしょうね、ということで、節酒~ダイエットを指示して終了になることがほとんどです。
お薬や健康食品は「時系列」が手がかり
時々、脂肪肝でもお酒でもない肝炎の方がおり、お薬や健康食品が原因の薬物性肝障害ということがあります。肝臓のために飲んでいるサプリや健康食品で逆に肝炎になったり、漢方など安全そうな薬が原因ということも。。
たとえば、昨年まで正常だった数値が今年悪化した場合、この1年で新しく飲み始めたお薬やサプリメントが原因のことがあります。その際は、2〜3か月ほどそれを中止して再検査し、原因かどうかを見きわめていきます。薬物性を疑うときはとにかく時系列が大事になります。
腹部エコー検査でわかること
肝機能異常の精密検査で行われる腹部エコー検査(腹部超音波検査)は、おなかにゼリーを塗り、機械をあてるだけの検査です。痛みがなく、放射線も使いません。妊婦さんにも行われます。体への負担が少なく、簡単に肝臓の悪い病気をチェックできます。

更に腹部エコー検査では、肝臓だけでなく、まわりの臓器もまとめて確認できます。
| 見える臓器 | わかることの例 |
| 肝臓 | 脂肪肝、肝硬変、腫瘍(肝臓がん、胆管がん) |
| 胆のう | 胆石、胆のうポリープ、胆のうがん |
| 膵臓 | 膵のう胞、膵臓がん |
血液の数値だけでは分からないことがあります
たとえば、γ-GTPやALPという数値だけが高いとき、精密採血をしても原因が分からず、まれに肝臓や胆道の腫瘍が原因だったということがあります。そのため、必ず血液検査だけではなく、腹部エコー検査で直接肝臓をみる必要もあるのです。
毎年の腹部エコーをおすすめします
ワクチンや一時的なお薬の影響を除くと、肝機能異常を指摘された多くの方は、肝臓に何らかの負担がかかっているサインと考えられます(内臓脂肪による脂肪肝やアルコール性肝炎など)。
なので、一度でも肝機能異常を指摘されたことがある方は、今後はできれば、毎年1回の腹部エコー検査で、肝臓の状態を見守っていきましょう。当院では腹部エコー検査を直接WEB予約で承っておりますので、お気軽にご相談ください。
脂肪肝が怖いのは肝臓だけじゃない|脳梗塞・心筋梗塞リスクとの関係
最後に一番よくある肝機能異常の原因、脂肪肝について少しだけ。脂肪肝は「太った人の問題」「お酒の話」と思われがちです。ですが、こわいのは肝臓だけではありません。特に内臓脂肪による肝炎は、将来の血管の病気が近づくサインでもあります。

関わる病気は「血管」と「脳」
脂肪肝の背景には、高血糖・高血圧・脂質異常が重なりやすく、動脈硬化(血管が硬くもろくなること)を進めます。その結果、脳梗塞・心筋梗塞、さらには認知症のリスクにも関わると考えられています。
目標は「ALTを30以内」
| ALTの数値 | 考え方 |
| 30以内 | ひとまず安心の目安 |
| 30を超える | 一度受診の目安 |
日本肝臓学会は「ALTを30以内に」と呼びかけています(奈良宣言)。施設によっては30を少し超えても「正常値」と表示されることがあるため、注意が必要です。
やせていても油断できません
日本人を含むアジア人は、見た目が太っていなくても(BMIが22ほどでも)、内臓に脂肪がつき肝炎につながる方が少なくありません。将来のためにも、脂肪肝による肝炎は早めに鎮めておくと安心です。
よくある質問
Q1.健康診断で肝機能異常と言われました。何科を受診すればよいですか?
A.消化器内科が適しています。
AST・ALT・γ-GTPが高くなる原因には、脂肪肝や飲酒だけでなく、B型肝炎・C型肝炎、自己免疫性肝炎、薬物性肝障害、胆道の病気などがあります。血液検査と腹部エコー検査を組み合わせて原因を調べます。
Q2.ALTが30を少し超えただけでも受診したほうがよいですか?
A.一度は原因を確認することをおすすめします。
日本肝臓学会は「奈良宣言2023」で、健康診断などでALTが30U/Lを超えていた場合は、かかりつけ医などを受診することを勧めています。31~40程度の軽い上昇でも、脂肪肝などの慢性肝疾患が隠れていることがあります。
Q3.AST・ALTが高いと、肝臓の機能が低下しているということですか?
A.必ずしもそうではありません。
AST・ALTは主に「肝臓の細胞が傷んでいるか」を見る検査です。一方、本当の意味で肝臓の働きが保たれているかは、アルブミン、ビリルビン、血液凝固能なども含めて判断します。AST・ALTが高い=100%肝臓が悪い、という意味ではありません。
Q4.ALTとASTでは、どちらが重要ですか?
A.肝臓については、一般にALTのほうが肝臓に特異性が高い検査です。
ASTは肝臓だけでなく筋肉や心臓などにも含まれています。そのため健康診断で肝臓の異常を拾い上げる際には、ALTが重要な手がかりになります。
Q5.γ-GTPだけが高いのですが、原因はお酒でしょうか?
A.お酒は代表的な原因ですが、お酒だけとは限りません。
脂肪肝、胆石や胆道の病気、お薬、肝臓の腫瘍などでもγ-GTPが上がることがあります。飲酒量だけで決めつけず、ALT・AST・ALPなどの数値や腹部エコーをあわせて判断することが大切です。
Q6.お酒をほとんど飲まないのに肝機能が悪いのはなぜですか?
A.飲酒をしない方の肝機能異常では脂肪肝が重要な原因のひとつです。
体重増加、内臓脂肪、糖尿病・高血糖、脂質異常症などを背景として脂肪肝になることがあります。そのほか、ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎、お薬やサプリメントなども原因になります。一度はそれらの病気を否定する採血を受けましょう。
Q7.痩せている人でも脂肪肝になりますか?
A.なります。
見た目が痩せていても、内臓脂肪が多かったり、糖代謝や脂質代謝に異常があったりすると脂肪肝になることがあります。特にアジア人では、BMIだけでは脂肪肝のリスクを判断できないことがあります。
Q8.脂肪肝は放置しても大丈夫ですか?
A.軽い脂肪肝のまま長期間変化しない方もいますが、一部では肝臓の炎症や線維化が進み、肝硬変や肝臓がんにつながることがあります。
また脂肪肝は、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患リスクが高まるとも言われており、将来のそれらの病気になるリスクを下げるためにも、改善すべき重要な疾患です。
Q9.脂肪肝はどのくらい痩せれば改善しますか?
A.肥満を伴う脂肪肝では、まず現在の体重の5%程度の減量でも肝臓の脂肪量の改善が期待できます。さらに大きな減量によって炎症や肝線維化が改善する可能性もあります。無理な短期減量ではなく、食事と運動を組み合わせて継続することが大切です。
Q10.運動をすれば脂肪肝は改善しますか?
A.運動には改善効果があります。
有酸素運動や筋力トレーニングは、体重が大きく減らなくても肝臓にたまった脂肪を減らす効果が期待できます。食事療法と組み合わせると、より効果的です。
Q11.前日にお酒を飲んだだけで肝機能の数値は上がりますか?
A.一時的に変化することはありますが、「前日に飲んだから」と決めつけるのはおすすめできません。てっきり~だと思ったら、実は特殊な肝炎や肝臓の腫瘍が隠れていることもあるので、結局は一度精密検査で原因を調べる必要があります。
Q12.激しい運動をした後にASTが高くなることはありますか?
A.あります。
ASTは肝臓だけでなく骨格筋にも含まれるため、激しい筋力トレーニングや長距離走などの後に一時的に上昇することがあります。その場合はCK(クレアチンキナーゼ)などの筋肉の検査も参考になります。特にASTだけが高い場合は、直前(数日前まで)の激しい運動について医師に伝えてください。
Q13.薬やサプリメントで肝機能が悪くなることはありますか?
A.あります。処方薬だけでなく、漢方薬、健康食品、サプリメントでも肝障害が起こることがあります。
特に「昨年までは正常だったのに今年急に悪くなった」という場合、新しく始めた薬や健康食品が重要な手がかりになります。ただし、処方薬を自己判断で中止せず、服用しているものを医師に伝えて相談してください。
Q14.「肝臓によい」と書いてあるサプリなら飲んでも大丈夫ですか?
A.必ずしも安全とは限りません。
健康食品や植物由来成分でも薬物性肝障害の原因になることがあります。「天然成分」「無添加」だから肝臓に安全とは限りません。肝機能異常の原因を調べる際には、サプリメントやプロテイン、漢方なども含め、飲んでいるものをすべて確認することが重要です。
Q15.肝機能異常からB型肝炎やC型肝炎が見つかることはありますか?
A.あります。
B型肝炎やC型肝炎は自覚症状がないまま経過することがあります。肝機能異常の精密検査では、これまで検査を受けたことがない場合などに、血液検査でB型・C型肝炎がないか確認します。また、よく献血でB型肝炎やC型肝炎は否定されていたから、精密検査は受けなくていいやという考え方をする方もいらっしゃいますが、治療すべき見つけるべき肝炎にはBとC以外にもたくさんの種類があります。肝機能異常がある方はやはり一度消化器内科を御受診ください。
Q16.肝機能の数値がそれほど高くなくても、肝硬変や肝臓がんになることはありますか?
A.あります。AST・ALTの高さだけでは肝臓の病気の重症度を判断できません。
慢性肝疾患では、病気が進行していてもAST・ALTがそれほど高くないことがあります。そのため血小板数の低下(20万以下)や肝線維化の指標、腹部エコーなども組み合わせて評価すべきです。また、脂肪肝からの肝臓がんは必ずしも肝硬変の人だけに起きるものでないことが有名です。そのため、やはり脂肪肝等と一度でも言われたことのある方は必ず毎年腹部エコー検査を受けましょう。
Q17.腹部エコーでは何が分かりますか?
A.肝臓では、脂肪肝、肝硬変を疑う変化、肝腫瘍などを調べることができます。また胆のう・胆管・膵臓など周囲の臓器も同時に観察できます。
ただし、腹部エコーですべての病気を100%見つけられるわけではなく、必要に応じてCTやMRIなど追加検査を行います。
Q18.腹部エコー検査の前は食事をしてもよいですか?
A.通常は、検査前の8時間ほど食事を控えていただくほうが適切に観察できます。
食後は胆のうが収縮したり、胃腸のガスが増えたりして観察しにくくなるためです。絶食時間については予約時の案内に従ってください。水や内服薬についても、事前の指示をご確認ください。
Q19.肝機能異常はどのくらいの数値なら急いで受診したほうがよいですか?
A.数値だけでは緊急度を決められませんが、AST・ALTが著しく高い場合や、黄疸(皮膚や白目が黄色い)、尿が濃い、強いだるさ、吐き気・嘔吐、意識がおかしいなどの症状がある場合は、早めの医療機関受診が必要です。
一方、症状のない軽度の異常でも、長期間放置せず原因を一度確認しておくことが大切です。
Q20.お酒はどのくらいまでなら飲んでもよいですか?
A.「ここまでなら誰にとっても安全」という飲酒量はありません。
飲酒による健康への影響には個人差があり、病気によっては少量の飲酒からリスクが上がります。飲酒する場合はアルコール量をできるだけ少なくし、毎日飲み続けないことが基本です。
なお、肝機能異常がある方で「ALTやγ-GTPが正常なら好きなだけ飲んでよい」という意味ではありません。肝機能の数値だけで安全な飲酒量を決めることはできません。