2025年10月17日

便秘に悩んだとき、多くの方が「ヨーグルトが良い」と考えがちです。
しかし、実際にはヨーグルトを毎日食べているのに便秘が改善しない方も少なくありません。
なぜヨーグルトで効果が出る人と出ない人がいるのでしょうか。
消化器専門医の院長が、便秘の原因からヨーグルトの効果、正しい選び方と摂り方まで、詳しく解説します。
便秘でお悩みの方はぜひ最後までお読みください。
「ヨーグルト=便秘解消」は本当?
「便秘にはヨーグルトが効く」という情報は、テレビや雑誌などで広く紹介されており、多くの方が実践されています。
確かにヨーグルトには乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌が含まれており、腸内環境を整える効果が期待できます。
しかし、消化器専門医の立場から申し上げますと、ヨーグルトだけで全ての便秘が解消するわけではありません。
便秘の原因は人それぞれ異なります。
腸内細菌のバランスが崩れている方には効果が期待できますが、食物繊維不足や運動不足、ストレス、腸の運動機能の低下などが原因の場合、ヨーグルトだけでは十分な効果が得られないこともあります。
また、ヨーグルトに含まれる菌の種類や量、個人の腸内環境との相性によっても効果は大きく変わります。
大切なのは、ヨーグルトを食べていれば大丈夫と過信せず、自分の便秘の原因を正しく理解することです。
便秘の原因とは
便秘の原因は実に多様で、大きく分けると機能性便秘と器質性便秘の2つに分類されます。
機能性便秘の主な原因
・食物繊維不足
現代の食生活では野菜や果物、穀物の摂取量が減少しており、便のかさを増やす食物繊維が不足しがちです。
・水分不足
十分な水分を摂らないと便が硬くなり、排便が困難になります。
・運動不足
運動不足は腸の蠕動運動を低下させ、便を押し出す力が弱まります。
・ストレス
自律神経の乱れにより腸の動きが悪くなります。
・腸内環境の悪化
悪玉菌が増えることで腸の働きが低下します。
・排便習慣の乱れ
便意を我慢し続けると、直腸の感覚が鈍くなり便秘になります。
器質性便秘の原因
大腸がん、腸閉塞、炎症性腸疾患など、腸そのものに病気がある場合です。
この場合は医療機関での診察が必要不可欠です。
当院では、大腸カメラ検査により器質性便秘の有無を確認し、適切な治療方針をご提案しています。
便秘が長く続く場合や、血便、体重減少などの症状がある場合は、早めの受診をお勧めします。
ヨーグルトが便秘に効くと言われる理由
ヨーグルトが便秘解消に効果があると言われる理由は、主に含まれる乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌にあります。
善玉菌の主な働き
・腸内環境の改善
善玉菌が腸内で増殖することで、悪玉菌の増殖を抑え、腸内フローラのバランスを整えます。
・腸の蠕動運動の促進
善玉菌が作り出す乳酸や酢酸などの有機酸が腸を刺激し、腸の動きを活発にします。
・便の性状改善
腸内環境が整うことで、適度な水分を含んだ柔らかい便が作られやすくなります。
・免疫機能の調整
腸内細菌は免疫システムにも影響を与え、全身の健康維持に貢献します。
ヨーグルトに含まれる善玉菌は腸内環境を整える有効な手段の一つですが、あくまでも便秘対策の選択肢の一つとして捉えることが大切です。
ヨーグルトで便秘が治らない人がいる理由
・便秘の原因が腸内環境以外にある場合
腸内細菌のバランスが便秘の主な原因でない場合、ヨーグルトだけでは効果が限定的です。
食物繊維不足、水分不足、運動不足、ストレスなどが主な原因であれば、それらを改善しない限り便秘は解消されません。
・腸内細菌との相性が合わない
ヨーグルトに含まれる菌の種類は製品によって異なります。
人それぞれ腸内環境が違うため、ある人に効果的な菌が、別の人には効果がないこともあります。
自分の腸に合った菌を見つけることが重要です。
・摂取量や継続期間が不十分
善玉菌が腸内で定着し効果を発揮するには、一定量を継続的に摂取する必要があります。
少量を不規則に食べるだけでは、十分な効果は期待できません。
・器質性便秘の可能性
大腸がんや腸閉塞などの病気が隠れている場合、ヨーグルトでは改善しません。
長期間便秘が続く場合や、血便、腹痛、体重減少などの症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
当院では大腸カメラ検査により、こうした病気の有無を確実に診断できます。
便秘改善に効果的なヨーグルトの選び方
ヨーグルトで便秘改善を目指すなら、製品選びが重要です。
・菌の種類を確認する
ヨーグルトに含まれる菌は製品によって異なります。
便秘改善に効果が報告されている主な菌は以下の通りです。
・ビフィズス菌
大腸で働き、腸内環境を整える効果が高い
・乳酸菌シロタ株
生きて腸まで届き、善玉菌を増やす
・ラブレ菌
植物性乳酸菌で腸内で生存しやすい
・LGG菌
腸管に付着しやすく、整腸作用が期待できる
・生きて腸まで届く菌を選ぶ
胃酸や胆汁で死滅しにくい、生きて腸まで届く菌を含む製品を選びましょう。
パッケージに「生きて腸まで届く」などの表示がある製品が目安になります。
・無糖または低糖のものを選ぶ
糖分が多いヨーグルトは、悪玉菌のエサにもなり得ます。
できるだけ無糖または低糖のプレーンヨーグルトを選び、甘みが欲しい場合は少量のはちみつやオリゴ糖を加えることをお勧めします。
・自分に合う菌を見つける
2週間程度同じ製品を続けてみて、効果を実感できない場合は、別の菌を含む製品に変えてみましょう。
自分の腸内環境に合った菌を見つけることが、便秘改善の鍵となります。
便秘が続くときは医療機関へ
ヨーグルトや生活習慣の改善を試しても便秘が続く場合、医療機関での診察が必要です。受診をお勧めするケースについて解説します。
こんな症状があれば早めに受診を
・2週間以上便秘が続いている
・血便が出る、便に血が混じる
・激しい腹痛を伴う
・吐き気や嘔吐がある
・急激な体重減少がある
・便が細くなった
・便秘と下痢を繰り返す
これらの症状は、大腸がんや炎症性腸疾患などの病気が隠れている可能性があります。
当院では、便秘の原因を正確に診断し、患者様一人ひとりに最適な治療を提供しています。
・詳細な問診と診察
生活習慣、食事内容、既往歴などを詳しく伺います
・大腸カメラ検査
必要に応じて大腸カメラ検査を実施し、大腸がんやポリープの有無を確認します。
当院では鎮静剤を使用した苦痛の少ない検査を行っています
・適切な治療の提案
検査結果に基づき、薬物療法、食事指導、生活習慣の改善など、総合的な治療方針をご提案します
立川髙島屋S.C.10階にある当院は、お買い物のついでに気軽に受診できる立地です。
便秘でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
ヨーグルトは腸内環境を整える効果が期待できる食品ですが、全ての便秘に効くわけではありません。
便秘の原因は人それぞれ異なり、腸内細菌のバランスだけでなく、食物繊維不足、水分不足、運動不足、ストレスなど様々な要因が関わっています。
ヨーグルトで便秘改善を目指すポイント
・自分に合った菌の種類を見つける
・毎日継続して摂取する
・食後に食べる
・食物繊維やオリゴ糖と組み合わせる
・バランスの良い食事と適度な運動を併せて行う
ヨーグルトを試しても改善しない場合や、血便、激しい腹痛、体重減少などの症状がある場合は、大腸がんなどの病気が隠れている可能性があります。
早めに消化器内科を受診し、大腸カメラ検査などで原因を正確に診断することが大切です。
よくある質問
Q.ヨーグルトは1日にどのくらい食べればよいですか?
A.一度に大量に食べるよりも、毎日継続して摂取することが重要です。効果を実感するには最低でも2週間から1か月程度続けましょう。
Q.ヨーグルトはいつ食べるのが効果的ですか?
A.食後に食べることをお勧めします。空腹時は胃酸が強く善玉菌が死滅しやすいため、食後の胃酸が薄まったタイミングが最適です。朝食後または夕食後が特に効果的です。
Q.どのヨーグルトを選べばよいですか?
A.ビフィズス菌や乳酸菌など、生きて腸まで届く菌を含む製品を選びましょう。また、無糖または低糖のプレーンヨーグルトがお勧めです。2週間試して効果がなければ、別の菌を含む製品に変えてみてください。
Q.ヨーグルトを食べても便秘が治りません。
A.便秘の原因が腸内環境以外にある場合、ヨーグルトだけでは改善しないことがあります。食物繊維不足、水分不足、運動不足なども見直しましょう。2週間以上続く便秘や、血便などの症状がある場合は医療機関を受診してください。
Q.乳製品が苦手でもヨーグルトを食べた方がよいですか?
A.無理にヨーグルトを食べる必要はありません。納豆、味噌、キムチなどの発酵食品でも腸内環境を整えることができます。また、食物繊維や水分を十分に摂ることも便秘改善には効果的です。