2025年3月05日

「痛くないから」「少しだけだから」と血便を放置していませんか?たしかに真っ赤な血便は、いぼ痔や切れ痔であることが多いのですが、直腸がんなどの深刻な病気が隠れている可能性があります。特に、肛門の痛みを伴う血便や、下腹部の痛みを伴う血便は、切れ痔や虚血性大腸炎などがん以外の病気のことが多いのですが、痛みのない血便は逆に怪しいのです。
早期発見・早期治療のためにも、自己判断はせず、医療機関を受診することが大切です。この記事では、痛くない血便の原因、考えられる疾患、対処法などを解説します。
痛くない血便、放置は危険?
「血便」と聞くと、多くの方は「痛み」を伴うものだと想像されるかもしれません。しかし、実際には痛みを伴わない血便も存在します。痛くない血便は、内側のいぼ痔(内痔核)など比較的軽度の疾患によることが多いです。しかし、中には大腸がんやポリープ、潰瘍性大腸炎など、早期発見・早期治療が重要な疾患が隠れているケースも少なくありません。
特に、近年増加傾向にある大腸がんは、早期には自覚症状がほとんどないことが多いです。そのため、痛みのない血便を放置してしまうと、病気の進行に気づくのが遅れ、治療が困難になる可能性もあります。
「痛くないから大丈夫」「そのうち治るだろう」といった自己判断は非常に危険です。前述した通り、痛くない血便のほうが逆に大腸がんなどからの出血である可能性が高まります。
ご自身の健康を守るためにも、痛みのない血便が出た場合は、決して放置せず、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
痛くない血便から考えられる原因と疾患
痛くない血便は、さまざまな原因で起こります。代表的な原因と疾患は以下の通りです。
・痔(内痔核)
肛門の内側にできるいぼ痔で、排便時に出血することがありますが、痛みはほとんどありません。
・大腸ポリープ
大腸の粘膜にできる突起物の総称で、出血していても痛みを感じることは少ないです。
目に見える出血をする大腸ポリープは、大腸がん一歩手前の大きなポリープのときと、若年性ポリープという10-20代でもできてしまう出血しやすいポリープの2つを考えます。いずれにしても治療が必要で、やはり痛みを伴わない血便になります。
→「大腸ポリープ」について詳しく
・大腸がん
早期には自覚症状がないことが多く、ある程度進行すると血便が出ることがあります。
特に肛門に近い直腸がんでは痔の出血と見分けがつかないほど真っ赤な血が出ます。逆に肛門から遠い盲腸などのがんでは、真っ赤な出血よりも、便の中に血の塊が混ざり込んでいるような見た目になったり、便全体が少し赤みがかっている程度で気付きにくくなります。
→「大腸がん」について詳しく
・虚血性大腸炎
大腸の血流が悪くなることで炎症が起こり、出血する病気です。ストレスなどをきっかけに発症するので、大腸における胃痙攣のようなものかと考えています。 多くは、腹痛(左下寄り)、下痢、血便という順序で起きるため、患者さんのお話を聞くだけで、ほぼ虚血性大腸炎なのだろうと推定できます。似たような病気に、大腸がんによる閉塞性腸炎というものがあるため、いずれ大腸カメラで大腸がんが無いかは確認したほうがよいです。
・潰瘍性大腸炎・クローン病
腸に原因不明の炎症が起こる病気で、血便や下痢、残便感などの症状が現れます。
→「潰瘍性大腸炎・クローン病」について詳しく
・大腸憩室出血
大腸の壁の一部が外側に飛び出した憩室というものからの出血します。これも痛みを伴わない血便になりますが、痔や大腸がんよりかなり大量の出血になることが多く、早めの病院受診が安全です。
これらの病気は、早期発見・早期治療が重要なものが多くあります。
痛みのない血便であっても、放置せずに医療機関を受診することが大切です。
血便の色と状態から考えられる疾患
血便の色や状態によって、考えられる疾患が異なります。
以下に代表的な例を挙げます。
・鮮血便(鮮やかな赤い色の血が便に付着している)
考えられる疾患:痔、切れ痔、直腸ポリープ、直腸がんなど
・暗赤色便(暗い赤色、あるいは黒っぽい色の血が便に混ざっている)
考えられる疾患:大腸がん、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、大腸憩室出血など
・タール便(黒くて粘り気のある、タール状の便)
考えられる疾患:胃・十二指腸潰瘍など、上部消化管からの出血
ただし、これらはあくまで目安であり、自己判断は禁物です。
血便の色や状態が気になる場合は、必ず医療機関を受診してください。
痛くない血便が出た時の対処法
痛くない血便が出た場合、以下の点に注意して、速やかに医療機関を受診しましょう。
・自己判断をしない
痛みがないからといって、自己判断で放置するのは危険です。前述した通り、痛みがない血便のほうが大きな病気である可能性が高いです。必ず医師の意見を聞いて、適切な診断と治療を受けてください。
・血便の状態を記録する
血便の色、量、状態(鮮血か暗赤色か、便に混ざっているか付着しているかなど)を記録しておくと、医師に伝えやすくなります。可能であれば、血便の状態を写真に撮っておくと言葉で説明せず正確に伝えられるので有効です。
・排便後、肛門周辺を清潔に保つ
痔であった場合、トイレットペーパーで強く拭きすぎると、出血を悪化させる可能性があります。温水洗浄便座を使用したり、シャワーで優しく洗い流したりするなど、清潔を保つようにしましょう。
・市販薬の使用は避ける
適切な診断の前に、おそらく痔だろうと思って自己判断で市販の痔の薬などを使用して様子をみていると、本当の病気に気付くのが遅れてしまうことがあります。医師の指示に従って適切な診断後に薬を使用したほうが安全です。
・医療機関を受診する
消化器内科や肛門科を受診しましょう。
不安な場合は、まずかかりつけ医に相談してみるのも良いでしょう。

医療機関での検査と診断
医療機関では、血便の原因を特定するために、以下のような検査が行われます。
・問診
血便の状態、排便習慣、過去のご病気などについて詳しく聞かれます。
・大腸内視鏡検査
肛門から内視鏡を挿入し、大腸の内側を直接観察します。ポリープなどの病気が見つかった場合は、その場で切除して治療することもできます。
→「大腸内視鏡検査」について詳しく
・血液検査
貧血の有無や炎症反応などを調べ、潰瘍性大腸炎などの難病の可能性を確かめられます。
・腹部CT検査・腹部超音波検査
必要に応じて、腹部の状態を詳しく調べます。大腸カメラでは見られない大腸の外側をみることができます。
→「腹部超音波検査」について詳しく
これらの検査結果に基づいて、医師が総合的に判断し、診断が確定します。
日常生活で気を付けること
血便を予防し、腸内環境を整えるために、日常生活で以下の点に気を付けましょう。
・食生活の改善
食物繊維を積極的に摂取し、便秘を予防しましょう。
野菜、果物、海藻、きのこ類などをバランスよく食べましょう。
脂肪分の多い食事や刺激物(香辛料、アルコールなど)は控えめにしましょう。
・正しい排便習慣
毎日決まった時間にトイレに行く習慣をつけましょう。
便意を感じたら我慢せず、すぐにトイレに行きましょう。
トイレではリラックスし、無理にいきまないようにしましょう。
・適度な運動
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を定期的に行いましょう。
運動不足は腸の動きを悪くし、便秘の原因になります。
・ストレスの軽減
ストレスは自律神経の乱れを引き起こし、腸の働きを悪くします。
十分な睡眠や休息をとり、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。
・十分な水分補給
こまめに水分を摂取し、便を柔らかくしましょう。
特に、朝起きてすぐと食事中にコップ1杯の水を飲むのがおすすめです。
これらの生活習慣を心がけることで、血便のリスクを減らすことができます。
よくある質問
Q. 痛くない血便が出ましたが、様子を見ても大丈夫ですか?
A. 痛みがなくても、血便は放置せずに医療機関を受診したほうがよいです。大腸がんなど、早期発見・早期治療が重要な病気は痛みのない血便のことが多いです。
Q. 血便が出ましたが、痔の市販薬を使ってもいいですか?
A. 自己判断で市販薬を使用するのは避けましょう。痔ではなかったとき、診断が遅れる可能性があります。必ず医師の診察を受け、適切な薬を処方してもらってください。
Q. どのような医療機関を受診すればいいですか?
A.消化器内科、肛門科を受診しましょう。不安な場合は、まずはお近くの内科クリニックへ相談しても良いでしょう。信頼できるいつもの先生から大腸カメラをおすすめされたら、当院へお越しください。
まとめ
痛みのない血便は、痔などの比較的軽い疾患から、大腸がんなどの重篤な疾患まで、さまざまな原因で起こります。「痛くないから大丈夫」と自己判断せず、必ず医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。早期発見・早期治療が、健康を守る上で何よりも重要です。 また、日頃からバランスの取れた食生活、適度な運動、規則正しい排便習慣などを心がけ、腸内環境を整えることも大切です。