2025年4月10日

胆石を持っていると「油っこい食事はダメ」と言われがちですが、実際にはどの程度の制限が必要なのでしょうか?本記事では、胆石の基礎知識から、再発予防に役立つ食事法、避けるべき食品、そして発作時の対処法まで、立川髙島屋S.C.大腸胃食道の内視鏡・消化器内科クリニックの院長が解説します。
胆石とは?
胆石とは、胆のうや胆管にできる石のことを指します。胆汁という消化液に含まれる成分が結晶化して固まり、石のようになったものが胆石です。主にコレステロールが原因となる「コレステロール胆石」が多く、ほかにもビリルビンなどからできるものもあります。
胆石ができると、無症状のこともあれば、右上腹部の痛みや吐き気、背中の痛みなどを引き起こすこともあります。特に脂っこい食事の後に痛みが出ることが多く、日常生活への影響も少なくありません。早期発見と適切な食事・生活管理が重要です。
胆石がある人は油物を控えるべき?医師がおすすめする食事
胆石を持っている方にとって、油物の摂取は注意が必要です。
脂肪分が多い食事は、胆のうを刺激して胆汁を分泌させる作用があり、これが胆石の移動や胆のうの収縮を引き起こし、痛みや発作の原因になるからです。特に揚げ物や脂身の多い肉、バターやクリームなどは控えるのが無難です。ただし、すべての脂肪を避ける必要はありません。オリーブオイルや青魚に含まれる良質な脂質は、適量であれば胆汁の流れをスムーズに保つ効果もあるため、完全に油抜きにするよりも、種類と量に注意することが大切です。
具体的に避けたい食べ物・控えたい食習慣
揚げ物・脂身の多い肉・乳製品など
胆石発作の再発や悪化を防ぐためには、特定の食品を意識して避けることが重要です。
特に注意したいのは以下のような高脂肪食品です。
・揚げ物(唐揚げ、天ぷら、フライなど)
胆のうを強く刺激し、痛みを引き起こす可能性があります。
・脂身の多い肉(バラ肉、ホルモンなど)
消化に時間がかかり、胆汁の分泌を促しすぎることがあります。
・バターや生クリーム、チーズなどの乳製品
動物性脂肪が多く、胆石に悪影響を及ぼします。
・ファストフード、スナック菓子
脂質と添加物が多く、胆のうに負担がかかります。
これらの食品は日常的に摂取しがちですが、胆石のある方はできる限り控えることが望ましいです。
具体的に避けたい食べ物・控えたい食習慣
一度にたくさん食べる・早食いなど
胆石の症状を悪化させるのは、食べ物の内容だけでなく「食べ方」にも原因があります。
以下のような習慣には注意が必要です。
・一度に大量に食べる習慣
胆のうが急激に収縮し、胆石が詰まりやすくなります。
・早食い
よく噛まずに飲み込むことで消化が不十分となり、胃腸や胆のうに負担がかかります。
・食事の時間が不規則
胆汁の分泌リズムが乱れ、胆汁が停滞しやすくなり、胆石のリスクを高めます。
・夜遅くの食事・就寝前の食事
胆汁の働きが鈍る夜間に消化を促すことで、胆のうに負担が集中します。
こうした習慣を見直すだけでも、胆石の発作を防ぐことにつながります。少量ずつ、ゆっくりとよく噛んで食べることを心がけましょう。
胆石持ちでも食べられる!おすすめの食事とレシピ例
消化にやさしいメニュー
胆石をお持ちの方でも、食事を楽しむことは可能です。
大切なのは「消化にやさしい」ことと「脂質を控える」こと。この2点を意識すれば、安心して食べられるメニューはたくさんあります。
おすすめの食事例
・野菜スープ(具だくさん)
食物繊維とビタミンが摂れ、胃腸にもやさしい。
・蒸し料理(魚の酒蒸し、鶏むね肉の蒸し焼き)
脂質を最小限に抑えつつ、素材の旨味を活かせます。
・お粥・雑炊
胃腸への負担が少なく、消化がスムーズ。
・豆腐と野菜の煮物
動物性脂肪が少なく、満足感も得られます。
レシピの工夫としては、炒め物の代わりに「茹でる」「蒸す」「煮る」を中心に調理し、油はオリーブオイルやごま油を少量だけ使うのがポイントです。
胆石とうまく付き合う生活習慣のコツ
適度な運動
胆石の予防や再発防止には、日々の生活習慣の見直しも大きなポイントです。
特に「適度な運動」は、胆汁の流れをスムーズに保ち、胆石の形成を防ぐ効果があります。
・ウォーキング(1日20〜30分)
血流を促進し、胆汁の停滞を防ぎます。
・ストレッチや軽い筋トレ
体の代謝を高め、脂質の代謝にもプラスに働きます。
・エレベーターより階段を使うなどの日常的な活動量の増加
無理なく運動習慣を生活に取り入れられます。
反対に、長時間座りっぱなしの生活や運動不足は、胆汁の流れが悪くなり、胆石ができやすくなります。特別な運動でなくても、日常生活の中で“ちょっと動く”意識を持つことが大切です。
胆石とうまく付き合う生活習慣のコツ
規則正しい食事と水分摂取
胆石の発作を防ぎ、再発リスクを減らすには、規則正しい食生活と十分な水分補給が欠かせません。
以下のポイントを意識することで、胆汁の流れを正常に保つことができます。
・1日3食、時間を決めて食事を摂る
胆のうの収縮リズムを整え、胆汁の滞留を防ぎます。
・朝食は必ず摂る
朝に胆汁を排出させることで、胆石のリスクを下げます。
・水分をしっかり摂取(1日1.5〜2リットルを目安に)
胆汁が濃くなるのを防ぎ、石の形成を抑えます。
・カフェインやアルコールの摂取は控えめに
胆のうを刺激しやすいため、症状が出やすくなります。
忙しい毎日の中でも、少しの工夫で胆石との上手な付き合い方ができます。水分はこまめに、食事はバランスよくを心がけましょう。
まとめ
胆石は、日常生活の中で「何を食べるか」だけでなく、「どう食べるか」「どんな生活を送るか」が症状の発症や再発に大きく影響します。
脂っこい食事や暴飲暴食は胆のうに負担をかけ、痛みの引き金になることがあるため、避けるべきです。一方で、すべての脂質を避ける必要はなく、良質な油を適量摂ることは胆汁の流れを助けるというメリットもあります。胆石がある方は、揚げ物や脂肪分の多い食品を控え、消化にやさしい食事を意識することが大切です。また、規則正しい食事、十分な水分補給、そして適度な運動を習慣化することで、胆石とうまく付き合うことができます。日々の小さな意識が、大きな健康維持につながります。
患者さまからよくあるご質問
Q.胆石があったら手術しないといけませんか?
A.胆石の手術となると、数日の入院と全身麻酔、胆石だけでなく胆のうごと切除する必要があります。そのため、デメリットがゼロではないので、胆石即手術ではありません。胆石が何か悪さをしたとき(胆石発作を繰り返す、胆のう炎になった、胆管炎になった)や、胆石が多いとき(充満胆石)、胆石が大きいとき(3cm以上で胆のうがんリスク10倍)は手術治療がおすすめされます。
Q.胆のうは取ってしまっても体に問題ないのですか?
A.本来、肝臓で作られた胆汁という消化液(脂質を分解)が、胆のうに貯蔵され濃縮されて、食後に十二指腸に放出されます。胆のうがなくなると、貯蔵・濃縮・食後の放出という機能がなくなるので、常に消化液が十二指腸に流れる状態となり、脂質の消化かがうまくいかず、胆のうをとってから下痢になってしまったという方が稀にいらっしゃいますが、手術後短期間だけの方が多く、長く続く方はかなり稀です。
盲腸(虫垂炎)で虫垂を切除しても問題ないのですか?もよく似た質問で、ほとんど問題ないのですが、一部の研究者は虫垂が腸内細菌に影響を与えているから切除すると少し腸内細菌が変化する可能性があると言っています。
Q.胆のうをとる手術は何日かかりますか?
A.病院によっても変わりますが、何もトラブルが起きなければ3日~5日程度です。条件を満たせば腹腔鏡手術で治療されることが多く、傷も小さいことがおおいです。
Q.どの病院で胆のうを取るのがおすすめですか?
A.盲腸の手術と同じくらいどこの病院でもよく行われている手術になりますが、できれば胆嚢摘出術の件数が多い病院や、肝胆膵外科学会高度技能専門医修練施設に認定された病院だと少し安心感があります。
Q.手術以外でどうにか治せませんか?
A.ウルソというお薬を使うと、できてまもない柔らかい胆石や、胆泥・胆砂のような胆石の前段階のものは溶かせることがあります。ただ、多くの方はしっかりとした石になった状態で見つかるため、薬で消すことはかなり厳しいです。ひとつだけ胆石がある方が、それ以上胆石が増えないようにウルソを飲むのはありかもしれません。
また体外衝撃波で胆石を砕けませんかというご質問もよく受けますが、胆石を胆のうで砕いてしまうと、その先の胆管の出口に詰まってしまい、胆管炎という更に大変な病気になってしまうため、行われません。
基本的には、手術するか、しないかの2択しかないとお考えください。
Q.胆石の大きさは関係ありませんか?
A.小さければ安心かというとそうではありません。小さいと胆のうの出入り口の胆嚢管に詰まって悪さをしやすかったり、その先の胆管に出て行ってしまい更に悪さをするリスクがあります。具体的には数mm~1,2cmの胆石は案外悪さをしやすいです。逆に大きければよいかというとそうではなく、3cm以上の胆石があると胆嚢がんのリスクが10倍と言われており、やはりよろしくありません。
Q.胆石発作のとき、どうしたらいいですか?
A.胆石が胆のうの出入り口につまりかけた状態です。安静にして水以外口にせず、あまり痛ければカロナールやロキソニンやイブなどの痛み止めを飲んでよいです。もし手元にブスコパンなどの胆のうの緊張をとるお薬があればそれもよいです。胆石発作が短期間で何度も続いたら手術したほうがよいです。胆石発作があまり強く、免疫が下がっていると、急性胆のう炎という臨時入院が必要な病気に発展することがあります。胆石発作に発熱、悪寒、嘔吐などを伴ったときはすぐに病院に行きましょう。