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健康診断の胃カメラで逆流性食道炎と言われました。どうしたらいいですか。
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軽症か重症かによりおすすめする方針は変わってきます。ただ多くの健康診断の結果用紙には軽症か重症か書いていません。当院で胃カメラをお受け頂ければ、軽症〜重症、対策の必要性も含めた結果説明をいたします。
逆流性食道炎
逆流性食道炎
短くまとめると「軽症なら少し生活を気をつけるだけ。重症ならお薬がおすすめ。まれにがんになるので、胃カメラは1-2年ごとに受けましょう。」
もう少し詳しく言うと「胃酸が食道に逆流して食道が荒れる病気です。長い期間その状態が続くと食道がんのリスクがあがると言われますが、軽症の逆流性食道炎はかなり多くの方に見られますので、そんなに心配することはありません。胸やけなどの症状が強いときや、胃カメラ検査での重症度が高めと言われたときは胃酸を抑えるお薬を飲んだほうが良いでしょう。逆流性食道炎がある方は悪化しないか、まれですががんができないか、1-2年ごとの胃カメラ検査を受けておくと安心だと思います。」
「最近、胸やけが気になる…」「胃の調子がおかしい…」もしかして、逆流性食道炎?そんな不安を抱えている方もいるかもしれません。
逆流性食道炎とは、胃酸や胃の内容物が食道に逆流することで、食道に炎症が起こる病気です。
通常、食道と胃の間には、胃の内容物が逆流しないように「下部食道括約筋」という筋肉が働いています。しかし、この筋肉が弱まったり、胃酸の分泌が多くなったりすると、胃酸が食道に逆流して、胸やけや胃酸が上がってくる感じ、げっぷや咳として症状が出てしまうことがあります。
逆流性食道炎は、決して珍しい病気ではありません。日本人の10人に1人が、この病気の症状があるとも言われています。症状がなく、健康診断の胃カメラ検査で軽症の逆流性食道炎と指摘される方はもっと多いです。
ピロリ菌の減少、食生活の欧米化やストレス社会の影響で、患者数は増加傾向にあります。
放置しておくと日常生活に支障をきたすこともあり、適切な治療が重要です。
逆流性食道炎の原因は、一つではありません。
加齢 | 年齢を重ねると、下部食道括約筋の機能が低下しやすくなります。 |
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食生活 | 脂肪分の多い食事やアルコール、カフェインの過剰摂取は、胃酸の分泌を促進し、胃酸の逆流を誘発する可能性があります。 |
肥満 | お腹周りの脂肪は、胃を圧迫し、逆流のリスクを高めます。肥満ではありませんが、妊娠中の女性も同じ理由で逆流性食道炎になりやすいです。 |
ストレス | ストレスは、胃酸の分泌を増加させ、逆流を悪化させることがあります。 |
食道裂孔ヘルニア | 胃の一部が横隔膜の隙間から食道側にずれる病気で、逆流性食道炎のリスクを高めます。猫背の方に多いため、普段から姿勢良く過ごすことは大事ですね。 |
喫煙 | 喫煙は、下部食道括約筋の機能を低下させ、逆流を促進します。食道がんのリスクも高めます。 |
これらのリスク要因に心当たりがある方は、特に注意が必要です。改善できる点は改善していきましょう。
逆流性食道炎の主な症状は、胸やけ、呑酸(口の中に酸っぱい液体が上がってくる)、げっぷ、咳などです。
しかし、これらの症状は放置していると、自然と感じなくなることも少なくありません。そのため、ついつい放置してしまう方も多いのですが、実は逆流性食道炎は炎症が強い場合、放っておくと様々な合併症を引き起こす可能性があります。
食道狭窄 | 炎症を繰り返した結果、食道が狭くなり、食べ物が詰まりやすくなります。 |
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食道潰瘍 | 胃酸で食道の粘膜に潰瘍ができ、出血や痛みが生じます。 |
バレット食道 | 食道がんのリスクとされる病気で、定期的な胃カメラ検査が必要となります。 |
そして、困ったことに、逆流性食道炎の炎症の強さと、症状の感じ方は綺麗に相関しないと言われています。症状は全然ないけど胃カメラ検査を受けたら重症の逆流性食道炎だったり、逆に症状が凄く強いけど胃カメラ検査ではごく軽症の逆流性食道炎だったりするのですね。
ですので、逆流性食道炎のときは、日常生活の質という点では症状が大事ですが、将来の発がんリスクや合併症のことを考えると、症状よりも胃カメラ検査での重症度の把握と治療のほうが重要になります。
前項で述べた通り、逆流性食道炎は軽症と重症でその怖さや注意度合いが大きく異なります。そして、その重症度とは、症状の強さではなく、胃カメラ検査でみたときの炎症の程度のことを指しており、症状と炎症の程度は綺麗に一致しません。
逆流性食道炎の診断のための検査は、主に内視鏡検査(胃カメラ検査)です。バリウム検査ではよほど重症化して食道に変化が起きたものしか診断できず、がんばって受ける意味は乏しいと思います。
内視鏡検査(胃カメラ検査)では、逆流性食道炎の炎症の程度や、合併症の有無などを直接確認することができます。
具体的には胃カメラ検査をする内視鏡医たちは、逆流性食道炎をロサンゼルス分類というランクをつけるのですが、M→A→B→C→Dという順にランクがあがっていきます。多くの方はM〜Aですが、B,C,Dは治療が必要な重症の部類に入っていると考えて頂いてよいです。
胃カメラ検査を受けることで、逆流性食道炎の程度の正しい評価ができるだけでなく、食道がんの早期発見にもつながります。逆流性食道炎と過去に言われた方、逆流性食道炎らしい症状が気になる方は、定期的な胃カメラ検査が望ましいです。
「胃カメラはつらい」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか?
しかし、当院では鎮静剤(眠り薬)と経験豊富な医師による内視鏡技術で、つらくない胃カメラ検査を提供しています。鎮静剤を使用することで、ほとんど眠った状態で苦痛や不快感を大幅に軽減し、もし完全に眠るのが怖い方でもかなりリラックスしたうとうとした状態で検査を終えることができます。
立川にある当院では、内視鏡検査の経験豊富な医師が丁寧な検査を施行し、専門のスタッフたちが患者様の不安を解消するための検査のサポートを行っています。逆流性食道炎の検査を考えている方で、胃カメラ検査につらいイメージをお持ちの方は、ぜひ一度当院へご相談ください。
逆流性食道炎の治療方法は、「生活習慣の改善」と「薬物療法」があります。生活習慣の改善としては、食事の見直し、体重管理、アルコールやカフェインの摂取制限、禁煙などが挙げられます。次の項で詳しく記載しています。
薬物療法には、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2ブロッカーが一般的に使用されます。現状、PPIという強いお薬は市販しておらず、病院での処方が必要ですが、その分かなり効きます。これらの薬は、症状の緩和と炎症の改善に効果的です。すごくまれに、治療をしても重症な場合や、もとに戻らない合併症が起きてしまった場合は、外科的手術治療が検討されます。
患者様一人ひとりの状態に適した治療法を見つけることが大切な病気なのです。
逆流性食道炎は、生活習慣の改善による予防〜改善が期待できます。
これらの対策を継続することで、逆流性食道炎の予防に繋がります。
ストレスは、逆流性食道炎の症状を悪化させるだけでなく、発症にも関与していると報告されています。
ストレスを感じると、自律神経のバランスが崩れ、胃酸の分泌が増加したり、食道の運動機能が低下します。
ストレスを解消するための方法を見つけ、心身ともに健康な状態を保つことが、逆流性食道炎の予防・改善に繋がります。
逆流性食道炎と食事 | 避けるべき食品と取り入れるべき食品 逆流性食道炎の症状を悪化させないためには、食事内容にも気を配ることが大切です。 |
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避けるべき食品 | 脂肪分の多い食品、チョコレート、コーヒー、アルコール、柑橘類、香辛料など |
取り入れるべき食品 | 野菜、果物、低脂肪の肉や魚、ヨーグルトなど |
バランスの取れた食事を心がけることが大切です。
逆流性食道炎は軽症であれば生活習慣で自然治癒することはありますが、重症の場合、ほとんど難しいと思います。治療を受けずに放置すると、出血や潰瘍など様々なリスクがあります。そして繰り返しになりますが、逆流性食道炎が軽症か重症かは、症状では判断できず、胃カメラ検査で診断する必要があります。
また、症状が長引く場合や日常生活に支障をきたす場合は、ただの逆流性食道炎ではない可能性もあるので、しっかりとした胃カメラ検査による診断とお薬による治療が必要です。
健康診断で軽症の逆流性食道炎と言われただけでしたら、ほとんど心配は要りません。ただ、症状があったり、強めの逆流性食道炎と言われた場合は、放置せずにどうすべきかご相談ください。適切な治療を受けることが、症状の改善や合併症の予防に繋がります。
「もしかして逆流性食道炎?」「胃カメラ検査を受けるのは不安…」そんな方は、ぜひ当院にご相談ください。
当院では、経験豊富な専門医が、患者様一人ひとりの症状やご希望に合わせた、最適な治療をご提案いたします。
つらくない胃カメラ検査にも力を入れておりますし、検査の必要性や実際行うかどうかもよくご相談させて頂きます。
院長 谷口 孝伸
日本内科学会 認定内科医 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医
弘前大学を卒業。立川の地で12年間、消化器内科医として研鑽を積み、甲府共立病院・がん研有明病院にて大腸カメラ、超音波内視鏡等の専門的な検査技術を習得。2024年8月、立川髙島屋S.C.大腸胃食道の内視鏡・消化器内科クリニック開設。
詳しい経歴や実績については、こちらをご覧ください。
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